逆ザヤの薬とはなにか [医学報道]

逆ザヤということばが薬に使われる場合を説明します。

売値が仕入れ値よりたかいものを順ザヤと言います。
普通そうでないと商売はなりたちませんね。

ところが、売値のほうが仕入れ値より安くなることが逆ザヤです。
これは、売れ残りになる商品の不良在庫を減らすために行うこともあるでしょう。
メーカーが希望小売価格を変えたために、店が損するなんて言うこともあります。

とはいえ、普通の商売で順ザヤだ逆ザヤだとはあまり言いません。

この話を商品の先物取引に適用するのが普通やることです。
今買って後で値が上がることを期待するのが先物市場ですね。
だから、あとからの値段のほうが上がることを順ザヤといいます。

あとで値段が下がることを逆ザヤと言います。

だから、下がりそうか上がりそうかをデータから分析し手を打つのが先物取引という仕掛けです。
穀物の生産報告が発表されたりすると、市場は動きます。
鼻が利く人間なら、逆ザヤになりそうな債券はすぐ売りとばし、順ザヤになりそうなものを買いあさります。

さて、薬品の世界ではこういうことになります。

売値は、薬価基準というものがありまして、法的に値段が決められます。
その値段で取引をしなければいけないのです。

薬品会社では卸会社にいくらで売るかは決められていません。
普通は売値よりも安い値段で納入するでしょうね。それが順ザヤです。
ところが諸事情あってそれより高い値段でないと出荷できないことがあります。
製造原価のためですね。これが逆ザヤです。

なぜこんなことがおきるかをご説明します。

熱を出したり鼻水がでたり頭痛がする症状、というのは一人の人間が1年暮らしたら1度か2度は起きる可能性があることです。
だったら、ニーズは大変にあるものです。
アセトアミノフェンだとか塩化リゾチームを使った薬は大量に処方されるでしょうね。
風邪にも効くし打撲にも効果があります。
だったら、こういう薬は非常に大量に作っておいて大丈夫です。
工場は高稼働できますし、出荷単位の製造原価は低くなります。
当然順ザヤになります。

水溶性たんぱくが不活性化しないように制御し、眼球の白濁化を阻止するというピレノキシンと言う薬があります。
そこそこ薄くして使います。
どう考えてもこれは白内障予防薬であって、高齢であっても白内障になる人は数割です。
そして、直すという特効薬でもない。
あんまり風邪薬みたいに大量には作れません。
でも薬価は決まっています。
だったら、逆ザヤになってしまうわけです。

数十万人にひとりでるくらいの症状に対する薬なんかは、必要にはちがいないけど、工場をフル稼働して製造するまでには至りません。
相当な逆ザヤになるはずです。

薬価基準というのは、薬が健康保険の対象になりますから統制して管理するための厚生労働省の考え方です。

エボラ出血熱の騒ぎで、別の症状用の薬が効くのではないかという話が出て富士フィルム系の会社が株価をあげました。
これはその薬が、薬としても順ザヤになりそうで、先物取引としても順ザヤだろうとみなされたからです。

なお、サヤは鞘という漢字だと思う人が多いのですけど、差也です。つまり入と出の差でありますということです。


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